『EQ』はエンゲージメントを高めるための基本能力
昨今「EQ脳」とか「EQリーダーシップ」等、ときどき聞かれるようになった『EQ(Emotional Quotient)=感情指数』については、アメリカの心理学者であり脳科学にも精通しているダニエル・ゴールマンが、様々な科学的データに基づいて、自己の心のあり方と人間関係において、どうあることが望ましいかを教えてくれています。(原著では「EI(Emotional Intelligence)=感情知性」となっていますが翻訳の際に「IQ」と対比する意味で「EQ」となりました)
同氏におかれてはいくつかの書籍が出ていますが、
その中で「EQ」の果たす役割として、
・自分の感情を認識する。
・自分の感情をコントロールする。
・他者の気持ちを認識する。
・人間関係を適切に管理する
の4つが述べられています。
そしてそのためには4つのコンピテンシー(能力)が必要と言われており、
簡単にまとめますと以下の通りです。
【1.自己認識】
自分自身の感情を読み取り、正しく認識し、自分の価値と能力を知ること。
【2.自己管理】
自身の感情をコントロールでき、感情や衝動に影響されることなく、状況の変化に順応して、
主体的かつ誠実に行動することで、周囲の信頼を得られること。
【3.社会認識】
他者の感情を適確に感知し、他者の事情に積極的関心を示す共感性を持ち、
組織内の潮流、意思決定ネットワーク、政治力学を読み取ることができる。
また職場内や顧客のニーズも正確に認識し対応することができる。
【4.人間関係の管理】
求心力のあるビジョンを掲げてメンバーを鼓舞し、モチベーションを与えることができ、
フィードバックと指導を通じて他者の才能を育てることができる。
また変革を発議、垂範し、様々な意見の相違をまとめ上げることで、
チームに協調と積極的協力の風土をつくることができる。
同氏著書の「EQリーダーシップ」の中で、
ジョンソン&ジョンソン(J&J)を成長路線に導いた元CEOのラルフ・ラーセンは、リーダーシップの育成こそがJ&Jの最も重要な課題であると考えてリサーチをした結果、「成長につなげているグループにいる管理職は、EQコンピテンシーのほぼすべてを備えていた。」と述べられています。
これは上記4つのコンピテンシーの中には、単にメンバーに心理的安全性を与えるだけでなく、
メンバーを奮起させて、共に前向きに目標や課題に取り組んでいく風土がつくれるかどうかという要素が存分に含まれており、この点が非常に重要であるということを認識しておく必要があります。
現在の企業経営者や中間管理職におかれては、まともにマネジメントやリーダーシップを学ばれた方は多くはなく、今だに高度成長期の指導方法がとられているケースも間々見受けられますが、
特にこれから経営層となられる中間管理職の方々におかれては、科学的根拠のあるマネジメントやリーダーシップ学をしっかりと学んで、部下を正しく導き育成させられるようにならなければ、企業の存続は難しいかもしれません。