健康経営優良法人なのに若手退職者が続くのはなぜ?
「健康経営優良法人」に認定されて既に何年かが経過。
残業時間も大幅に減少し、有給取得率も向上。ハラスメント対策も整備し、表面的には“ホワイト化”が進んでいる。
それにもかかわらず、なぜか若手社員の退職が続いている――。
こうしたご相談が、近年増えているのは何故でしょうか?
この背景にあるのが、いわゆる「ゆるブラック企業」と呼ばれる状態です。
これは長時間労働やパワハラが横行する従来型の“ブラック企業”とは異なり、
働きやすさは一定水準に達しているにもかかわらず、その一方で「仕事にやりがいが感じられない」「会社の将来も自身の未来も感じられない」「頑張っても評価されるイメージが無い」といった不満が組織内に蔓延っている状態です。
若手世代、特に前向き志向の方々ほど、単に楽な労働環境で働きたいわけではありません。
むしろ「成長したい」「自分の市場価値を高めたい」という意識が強い傾向にあります。
心理的安全性があり、過度な負荷もない。しかしチャレンジする機会も成長のためのフィードバックも乏しい。
結果として毎日の仕事にもやりがいが感じられなくなり、「ここに居続けても成長できないのでは」という不安が離職につながります。
健康経営の本質は、単なる労働時間管理や福利厚生の充実ではありません。
本来は、従業員の心身の健康を通じて「組織の生産性と持続的成長を実現する」経営戦略です。
しかし制度や認定取得が目的化すると「整っているが、熱量のない組織」になりやすいのです。
特に中小企業において注意すべきことは、「配慮」がただの「放任主義」になっていないかという点です。
叱らない、過度な負荷をかけないこと、それ自体は悪いことではありません。
しかし、叱らないことや過度な負荷をかけないことが部下を成長させられない言い訳になってはいないでしょうか?
人財育成の方法(マネジメント)は時代の変化とともに大きく変化しています。
つまり経営者も部課長職の中間層の方々も自身の部下育成スキルをバージョンアップしなければならないのです。
特に、
・自社および自チームのビジョンが明確に言語化できていて、それが社員一人ひとりのキャリアとどう結びつくのかを伝えられているか?
・各メンバーに挑戦機会が与えられ、任せっぱなしではなくフィードバックによって、ストレッチの効いた目標設定と継続的対話(軌道修正)がなされているか?
・成果と貢献に関して、日常的に感謝と期待が伝わっているか?
などについては、
単に研修とかの座学での学びだけではなく、職場における実践の繰り返しによる体得が必要です。
健康経営は社員が安心安全に働くための土台です。
しかしその土台だけでは、人は燃えません。
自社そして自身が所属するチームの未来に希望が抱け、
そこに自身の挑戦と成長の機会があれば、メンバーは間違いなく「やりがい」が高まります。
健康であることと、活き活き働けることはイコールではありません。
もし「制度は整っているのに若手が辞める」という兆候があるなら、それは組織が単に “優しいがぬるい状態”に陥っているサインかもしれません。
「守る経営」から「育てる経営」へ。
今その視点の転換が、中小企業の持続的成長を左右しているとも言えるでしょう。