組織・事業と社員のやりがいの関係性について

働き方改革の推進によって、多くの中小企業においても、福利厚生もある程度充実し、ワークライフバランスの制度も整ってきました。
しかしながら一方で、それらを整えたにもかかわらず、社員のモチベーションがあまり高まってこないといった企業様も多いのではないでしょうか。いやむしろ、社員への処遇が好転したことで、どちらかというと緩い社風になってきたと感じておられる経営者の方々もいらっしゃいます。
とは言え、だから厳しく締め付けたりしますと、これは心理的安全性が崩れ、社員のやる気を一層削ぐことにもなってしまい、どうすれば良いのか困っておられる経営者の方も多いのではないでしょうか?

そこには、評価制度に対する不満や給与面での不満がある場合もありますが、一番重要な社員のやりがいを高めるための環境ができていないというところに問題があります。
「社員が自ら積極的に仕事に取り組んでいる。」
「個々の社員が高い成長意欲を持っている。」
こういった風土を作るにはどうすれば良いのでしょうか。

それは社員がどう感じられれば仕事のモチベーションが上がるかを知っておく必要があります。
①自身の強みを活かせている
②上司がチャレンジやその失敗を許してくれるとともに、自ら責任をとってくれる
③小さな成功の積み重ねを経験させてくれて、それが自信につながっている
④御得意先や会社、社会に貢献できている実感がある

①については、
部下となっている社員それぞれについて、スキルだけではなく、過去から現在までの経験や嗜好、趣味などに及ぶまで、可能な限り知っておく必要があります。
これらについては1to1ヒアリングでは引き出せないので、普段からの「雑談」が必要となります。
直属の上司はもちろんですが、経営層にとっても一般社員との「雑談」は人事にあたっての非常に重要な判断基準の元となります。

②と③については組織の問題です。
元ソニーの平井一夫氏によると部下を持つリーダーは、仕事上のスキルよりも以下の能力が必要であることが重要と言われています。
「人の話を聞く」
「公平・公正に判断する」
「明確な決定をする」
「気分の浮き沈みがない」
「責任をとる」
「手柄を独り占めしない⇔失敗したら自分が責任をとる」
厳しい言い方をいたしますと、これらの能力が無い人はそもそもマネージャーには向いておらず、一般的な企業においては課長職までは何とか務まっても、それ以上のポジションに就けることはやめておいたほうが良いということです。部下のやりがいを喪失させて、退職の増加につながることにもなりかねません。

④は事業自体のあり方です。
携わっている事業が、
「社会への貢献度の高い事業か?」
「収益性も高く自社に貢献できる事業か?」
「御得意先に喜んでいただける事業か?」
が問われます。

「社会への貢献度の高い事業か?」は会社としての企業理念のほかに、
その事業の事業理念(何のためにこの事業をやっているか)について明確化し、それを事業関係者全員に浸透させる努力が必要です。
特に若手社員の皆さんには、自身が携わっている事業の社会的意義も十分理解されないまま日常の業務に追われていたりで、これではやりがいには繋がりません。
このことはトップはもとより事業責任者の重要な役割です。

また「収益性も高く自社に貢献できる事業か?」も重要です。
自身が毎日頑張っているのに、収益性の低い事業に携わっていると、会社や同僚への貢献度も感じられず、虚無感にさいなまれることになります。
特に数十年継続している事業になりますと、その事業責任者は守り姿勢に入ります。仮にその事業が収益性が高ければ、若手もまだ自社に貢献している実感は多少持てるのですが、収益性が低い事業の場合は当然のことながらモチベーションは上がらないことになります。
そしてそういった収益性の高い事業を創り出すことこそが、経営層の役割になります。

更に「御得意先に喜んでいただける事業か?」については、お客様と直接接点を持つ営業の方々については普段から感じ取れることですが、意外と見落とされているのが、直接お客様と触れることのないバックアップ部隊の方々に対してのことです。
ご相談企業様において個別ヒアリングをいたしますと、よく聞かれるのが、営業事務職や製造現場の方々から、自分がやっている仕事が本当に顧客に喜ばれているのかどうか分からず、モチベーションに繋がらないといった声が出ます。
これは営業から関係各部署へのフィードバックが不足している現象と言えます。
折角良い対応をしてあげたのに、折角良いものを作ってあげたのに、営業から何の打ち返しもない状況が続くとバックアップ部隊のモチベーションは上がることはありません。
これは営業の方からしますと面倒に感じられる方も多いのですが、
そういったミッションや場を意図的に設けて、関係各部署と良いことも悪いことも共有し、ひとつのチームとしての一体感を築くような施策に取り組むことが必要です。

以上のように、人を育てる環境づくりというのは、かなり手のかかることも多いわけですが、
これらに取り組んでいる企業においては、社員の皆さんが何ごとにもポジティブに取り組み、着実に業績を高めていることが実証されています。