メンバーのポテンシャルを引き出す

マネジメントの仕事は、「メンバーのポテンシャルを最大限引き出すこと」だとよく言われます。
実は経営層や中間管理職の方々もそのことは頭で分かっておられる方が多いのですが、
ではそのためにはどうすれば良いのか?ということが分からず、結局十分にメンバーのポテンシャルを掴みきれないままに足踏みされておられる方々が多いのではないかと思います。

そのスタートラインは、まずメンバー個々人の(潜在的なものも含めた)資質を知ることが必要になります。
しかしながら、職場で共に過ごす時間は非常に長いにもかかわらず、メンバーの資質を理解しているマネージャーの方々はあまり多くなく、ほとんどの場合、表面的な資質しかとらえていません。

それはどうしてでしょうか?

私はコンサルタント先の企業様において、直接社員の方々とも対話する機会がありますが、
その時社員さんのちょっとした言葉から、その方の隠れた資質を見つけることがよくあります。

それは、「前職ではこんな仕事をしていた」「休みの日にはこんなことをして過ごしています」とか「学生時代にこれこれが得意でした」「これは面白いですよね」といった、主にその方の経験談や価値観、ライフスタイルといったことからです。
そして実際に、そこで気づいたその方の資質にもとづいて、適した業務を担当してもらうことで、その方自身が活気づいて、良い成長のスパイラルが生じたということを多々経験しています。
(ちなみにマイナスの結果になったことは一度もありません)

一方で、これらの雑談の中でみられる経験談やご自身の価値感、ライフスタイルに関する言葉は、実際にはほんの一言でしかなく、多くの会話の中での僅かな断片でしかありませんので、普通の方であれば聞き流してしまうものです。(実際にそういった対話をしている場に上司の方がおられても、重要となる言葉を聞き流しておられます)

そこにはどういった違いがあるのでしょうか。

それは唯一、社員の方々と対話する際に常にアンテナを張っているかどうかだけの違いであると言っても良いでしょう。
アンテナをしっかりと張っていますと、ちょっとした言葉に対して「あっ、この人こんな仕事に向いてるな」と、ピッピッと反応があります。

つまり「メンバーのポテンシャルを最大限引き出す」ということをいつも第一に考えていると、自然にこういった反応が感じられるようになるのですが、そういう意識が強くなければ、さらっと聞き流してしまうというわけです。

ちなみにこれは物を探知するレーダーと同じです。
レーダーは対象物を探知するためにこちらから電波を発信することで、その電波の跳ね返りをキャッチして探知いたします。
「メンバーのポテンシャルを最大限引き出す」ということをいつも第一に考えているということが、常に電波を発信していることと同じであり、その電波が弱ければ対象物はキャッチすることができません。

随分と感覚的なことと思われるかもしれませんが、これは新規事業を創出する際も同様です。

新しい事業について、常から頭を巡らせてアンテナを張っている人は、ちょっとしたビジネスチャンスの情報にピッピッと反応しますが、その意識が弱い人の前にそういったビジネスチャンスになるような情報が表れていても、一瞬一過性のことなので全く気づくことはありません。

人財育成においても同様で、
「このメンバーを何とか育てたい」という強い願望を持っていますと、自然に個々の隠れた資質に気づきますが、願望が弱いリーダーは気づかないまま今まで通りにチームをマネジメントしようとします。

マネジメントをされていて人財育成に悩まれている方々には、
今一度職場において自身が一番マインドしておかねばならないことについて、振り返ってみる必要があるのではないでしょうか?
売上や利益の拡大は目先の目標のひとつであって、組織が目指すべきビジョンと言えるものではなく、組織が成長しなければ、業績の拡大は望むべくもありません。