少子高齢化社会での課題

1月に経団連から春闘を前にして、「年功型賃金を前提に企業経営を考えることが時代に合わないケースが出ている」との発言がありました。
この今更とも言える発言はあくまで労使交渉に向けての企業側の交渉方針ですが、平たく申せば安易に中高年の賃上げはできませんよということでしょう。

一方で、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(平成29年度)の結果をみると、
正社員の年齢別平均賃金は、男性の場合50歳~54歳でピークを迎え、55歳~59歳では微減、60歳~64歳ではピークから25%減、65歳~69歳は33%減となっています。つまり高齢層の一定の人件費抑制については多くの企業において、早期退職や役職定年など過去からいろいろと実施されてきています。

私が以前勤めていた会社においても課長は50歳で昇進出来なければ役職が外れるといった役職定年の形をとっており、それにより人件費の膨張が抑えられる仕組みになっていました(現在規定は変わっていますが)。
また全体的にはまだ60歳定年のところが多いと思いますが、嘱託などで継続雇用をするにしても職務負担を減らして平均的な相場として7割程度まで賃金を減額するところが多いように見受けられます。

これは生活費が最も必要となる子育て世代の30代~40代で所得が多くなるように、そして50代で老後の準備をするという意味では、生活設計の視点から合理的な考え方であるとも言えます。

しかしながら現在は、健康保険や年金などの社会保険料は年々増額しており、
給与の増加よりも控除される額のほうが大きくなる場合もあり、一般会社員の手取り額は横ばいか減少してしまうケースも多々見受けられます。

そのため企業年金があったり出向先を確保できる大企業とは異なり、
中小企業においては尚更のこととして、社員が将来の生活不安を抱えざるを得ず、かたや企業としては簡単に人件費を膨らませることも出来ない状況で、そのせめぎ合いにおいて非常に難しい舵取りが必要になってきているのではないでしょうか。

つまり今後中小企業においては、60歳以降の継続雇用を前提にしながら、様々な施策を駆使して労働生産性を上げることに集中することが今まで以上に必要になってきています。

そして従業員の方々に、決して高くない賃金であっても、
健康で働き甲斐を持って、より労働生産性を高める取り組みを社員一丸となって進め、中高年の方々にも働き続けていただかねばなりません。

そのためには、やはり労働環境や職場環境を出来る限り整えて、「社員を大切にする企業」となることが求められているのではないでしょうか。

  

※賃金構造の年齢別比較に関して、女性の場合を記載しなかったのは、
同じピークとなる50歳~54歳の平均賃金が、男性の69%の賃金しかないため、結果としてその後の経年による減少比率は65歳~69歳でも12%減と少なくなっていたからですが、これについては男女間の賃金格差という別の大きな問題とも言えます。