HMパートナーズ

さて私の尊敬する経営者の御一人に星野リゾートの星野佳道さんが居られます。
星野リゾートのWEBサイトを見ていただくと分かりますが、国内各地の各リゾートは決して安くない価格帯であるのに、「一度行ってみたい！」という気にさせる様々なサービスと企画で溢れています。
経営層からスタッフまでが一丸となって、マーケットニーズを深く掘り下げ多様なサービスを構築している努力を伺い知ることができます。

星野氏はコロナ禍において、いち早く今後の感染状況の波動を推定し、インバウンド回復までのマイクロツーリズムという事業戦略を打ち出されました。
現実的に現状（2020年9月中旬時点）での各リゾートの予約サイトで稼働状況を見る限り、（低価格帯でないにもかかわらず）次月も含めて大半が宿泊予約で埋まっているリゾートが多いということが分かります。
新型コロナが拡大し始めた今年３月時点から星野氏の戦略と照らし合わせると、安心を提供するという感染対策も含めて、ニーズを深堀して最適なサービスや商品をつくれば必ず売れるというマーケティングの原理原則がまさに実行されているように思います。

ただこういった話をしますと、中小規模事業者の方からは２つの意見が出てくることになります。

ひとつは「うちも一所懸命ニーズを探ってそれに応えようとしている。」と言われることです。
これはよくある経営者の思い込みからくるものですが、売り手側が捉えているニーズと買い手側のニーズは意外とズレているということに気付いておられないことが多いということです。特に同じ業界で長くビジネスをされてきた方々ほどそういった思い込みが強いものです。
提供するサービス（商品）は買い手のニーズと６～７割が合致する程度ではダメで、限りなく１００％に近く合致するまでに完成度を上げる必要があります。
新事業展開での失敗例として多いのは、売れそうなサービス（商品）を思い付くと完成度を高めることなく世に出してしまい、その後もニーズとの微妙なズレを認識、修正することなく継続してしまうことです。

そして、もうひとつ出てくる意見は何かと言うと、
最初から自社の現況を顧みて諦めてしまうことです。
例えば家族経営の旅館の方々から見れば星野リゾートとは資本力が違うと思われるかもしれません。資本力があるから、素晴らしい設備やサービスが提供できるのであって、自社に当てはまらないというものです。
またマーケティングという言葉は、何かしら大手の広告会社がビッグデータを分析して導き出すようなもので、小規模事業者には縁遠いもののように思われがちですが、企業規模や業種には関係なく、世のニーズを探り出すことがマーケティングの基本であることには変わりは有りません。

星野氏も経営のスタートは長野県軽井沢のイチ温泉旅館の跡継ぎとしてドン底からのスタートです。マーケティングの原理はすべての人に平等であり、また誰にできて誰にできないというものではなく、星野氏が成功したのは広く様々な知識や知恵を結集し、協力を得る努力を続けてきたからのものでしかないと思います。
実際サービスや商品をヒットさせるかどうかは、買い手のニーズを如何に的確に知るか否かであり、企業規模には関係が無いのです。
それが証に、大手生活用品企業が気付かないのに、一般主婦の方が自身のちょっとした不満から産んだ商品を大ヒットさせることはよくあります。
更に星野氏は、低価格帯の旅館やホテルなどが政府の「GO TO キャンペーン」などでの恩恵が出にくいことについて、料理のグレードを上げたり、他のサービスを高めたり付加することで、ベース単価を上げ、利用客から見た魅力を高めるとともに、キャンペーンでの自社への恩恵度も増やすといった方法もある、と言っておられました。
料理のグレードはすぐに上げられないと思われるかもしれませんが、実は今まで料理長に対してこれだけの原価に抑えるように締め付けをしていただけで、通常の料理人であれば、より高級な食材を使ってレベルの高い料理を作ることに対する欲求が無い人はほとんど居られないのではないでしょうか。
更に例えば、小規模旅館であれば地域の土産物店や飲食店など他の観光産業と協力をして、独自の観光割引パックやクーポンなどの優待サービスを作るといった企画で集客を高めているといった事例も既に出てきています。

今経営者の方々においては、現況を悲観しても状況は悪化するだけであり、最も愚かなことは、一人で悩み考え込んで悲観するだけの袋小路に入ってしまうことです。
経営者はこの厳しい現状を様々な事にチャレンジするチャンスであると捉えることが必要で、そのためには、できるだけ多くの人の知恵と力を借りることが必須です。
同地域の関連業種の方々や知見をお持ちの方々など、積極的に多様な方々とのコミュニケーションをとることにより、目先が拓けることに繋がってくるものと思います。

今こそ顔を上げて、多くの方々の力を借りて、知恵を出し合い、道を切り開いていきましょう！

※ＨＭパートナーズでは事業構築のサポートもさせていただいております。どうぞお気軽にご相談ください。