2021年度 健康経営優良法人の申請サポートを終えて

11月27日、2021年度の健康経営優良法人(中小規模法人部門)の各企業の申請サポート業務が終了いたしました。
申請書の設問については年々進化しており、健康経営で求められるレベルについては段階的に高くなってきていると感じます。これは政府の「働き方改革」や「SDGs」を進めていくにおいても、健康経営のベースとなる「健康」「職場環境」「メンタルヘルス」などの改善が重要な要素になっているからに他なりません。

また2021年度申請書における特筆すべき点は、昨年は任意項目であった「健康課題に基づいた具体的目標の設定と計画」が今回優良法人認定の必須項目となっていたことです。
そしてこの設問はまず自社として設定する目標を12のカテゴリーから選択するようになっているのですが、各企業様の回答で多かったのは「メンタルヘルス不調者の予防・発見・対応」でした。

つまり、多くの企業が今従業員のメンタルヘルスが経営上の大きな課題と捉えており、そこに様々な対策を打っていかなくてはならないと考えているということです。

ご存知のように、メンタルヘルスの不調は直接、生産性、定着率などにも影響してきますが、その要因としては、「職務内容」「労働時間」「職場環境」「組織風土」などが挙げられます。
実際のところ、今まで中小企業では従業員のメンタル対策は後回しにされてきた感がありますが、身体的な健康に気を遣うだけでなく、メンタル面での改善を促進することで、ウエルビーイングを高め、職場の活性化に繋げて、企業全体の生産性の改善へと結びつけていくことが重要であると認識されてきているということでしょう。

一方で身体的健康と心的健康は相関関係にありますので、その対策についても相互に連動していることが多く有ります。

例えば、職務内容や勤務時間の対策をすることで、労働者の過度の負荷を減らし、精神的にも余裕をもたらします。

具体的には、「きつい、汚い、危険」の3Kと言われる職種においても、業務フローや職場環境を変えることで労働者の過度の負荷を減らし、結果若者にも支持されている企業もあります。
また従来の勤務体系からシフト制やフレックスタイム制などを取り入れることで、生産性を減らすことなく、残業時間の大幅な削減や全従業員の労働時間の削減に成果を出し、働きやすい職場として定着率を高めている企業もあります。

過去、企業においてメンタルヘルス不調と言えば、うつ病などのストレス障害がその代表格ですが、そういった従業員が現れると、その従業員が担っていた業務が滞るだけでなく、他の従業員にも伝播して組織風土全体に影響を及ぼすこととなり、企業全体の生産性にもマイナス要因となります。
そして最悪の場合は訴訟問題などにも発展することがあり、生産性の無いエネルギーを想像以上に消耗することにもなりかねません。

今「健康経営」は、健康管理、食事対策、運動対策、受動喫煙対策、などは当然のこととして、メンタルヘルス対策のためにも、より踏み込んだ取り組みが求められています。

更にコロナ禍においては、直近で20代と40代女性のメンタル不調者が急増しているという事実も踏まえて、パート社員など非正規社員への対策の充実や、不調者が出た場合のサポート体制の整備なども非常に重要になってきているのです。

そういった時流も踏まえて、現在従業員50人以上の事業場を持つ企業では産業医の選任とストレスチェックが義務付けられていますが、50人未満の事業所しか持たない企業においてもストレスチェックを実施している企業が随分と増えてきました。

つまり、中小企業においても、メンタル不調者を出さないための予防と、早期発見、万一出た場合の対策を整備しておくことが重要な課題になってきているということでしょう。

新型コロナの影響だけでなく、働き方改革やSDG’sという世の中の流れを鑑みると、中小企業も今新しい経営スタイルを取り入れていかなければ、将来的な事業の発展にも繋がっていかないということではないでしょうか。