MBO(目標管理制度)とは?
皆さんはMBOというワードをご存知でしょうか?
一般的には「経営陣による自社株買い」という意味でのワードとして知られていますが、マネジメントにおいては『目標管理制度』=Management by Objectivesであり、現在では採用している企業も多い組織マネジメントの手法になります。
具体的には、従業員に自身の目標を決めてもらい、その進捗や達成度合いによって人事評価をしていくマネジメント方法で、皆さんの会社の人事評価制度などでも取り入れられているのではないでしょうか?
とは申せ、この手法の基礎は1954年にかのピーター・ドラッガーが提唱したものです。
では、現在においてもこの考え方をベースとした制度を取り入れられているところが多いのは何故でしょうか?
それは上長との擦り合わせは必要であるものの、個々の従業員自身が立てた目標であり、上からの一方的な押し付けではなく、目標に対して一定の納得感があるということが自発的行動に繋がるということがあります。
また他者との相対比較ではなく、過去の自分との比較であり、自身の成長プロセスを実感できることもその利点でしょう。
更に、目標を複数以上(通常数項目)設定することによって、単にミッションに対する結果だけでなく、職場において自身がチャレンジしたいことや職務に有用な資格取得など、自身の成長を図るための目標も掲げることができ、モチベーションに繋がるといったこともメリットと言えるでしょう。
ただこの目標管理スタイルの人事評価制度を進めていくにあたっては、いくつかの重要なポイントがあります。
1.まず目標設定をするにあたり、具体的なプロセスと目標値を掲げることです。
曖昧な目標は評価する側もされる側も評価時に大変困ることになります。
例えば「〇〇のマーケットにおいて売上を大きく拡大する」という目標設定であれば、「大きく」の捉え方は、評価する側とされる側ではおそらく異なってくることでしょう。
それ故、評価される側にとっては多少シビアに感じられることもあるかもしれませんが、定量化できるものであれば具体的な数値、定性的なものであれば具体的な(目に見える)状態を目標に掲げておくことが、結果評価の際にお互いにとって納得感のいくものとなります。
2.次に重要なことは、個々人の立てた目標が、所属部署の目標と合致しているかということです。
これには、まずは個人が自主的に目標を考える訳ですが、上長が以下の視点で本人としっかり擦り合わせをすることが大切です。
①本人が立てた目標と所属組織としての目標が連携しているか?
②部門内の同じグレードのメンバーと同レベルの難度の目標になっているか?
③全社的な同じグレードのメンバーと同レベルの難度の目標になっているか?
①については、所属部署のミッションと直接関係してくる目標に関して、そこと個人目標が繋がっていなければ、単なる烏合の衆になってしまいます。
また目標項目の中では、資格取得など所属部門の短期目標にはあまり影響を与えないものもあり得ますが、中長期であっても、それが自社および所属部署にとって有用となる目標でなければなりません。
また②③については、MBOにおける個人別評価制度は、基本は個々人の成長を見るということが主体であり、他者との比較で評価をするという相対評価ではないところが良いところでもありますが、かと言って、あまり目標設定のレベルにバラつきがあると、簡単な目標設定で高評価をとったり、高い目標を立てて低評価になったりで、別の意味での不公平感が生まれることにもなります。
そのため最初の目標設定の段階で、同グレードの人については、全く同じレベルは難しいにしても、達成難易度レベルが大差のない目標にしておくことが重要です。
3.次に重要なことは、例えば半期ごとに評価を実施するとすれば、その6ヶ月の間に、立てた目標が実態と合わなくなることがあります。端的な例で言えば、期中で所属部署が変わった場合や、ミッションに大きな変更が起きた場合などがそれに当たります。
そういった場合は、その時点までの目標については一旦そこまでの達成度合いで評価をし、そこから先は目標設定をやり直して実態に合ったものに変えて期末に評価することとして、通期では両評価を総合的に評価する必要があります。
4.あと一つは、しっかりと定期的にフィードバックの対話をすることです。
目標を立ててスタートしたものの、あとは次の評価時期である半年後のフィードバックまで、目標を立てた本人もその上長も全くフォローしないといったケースがよく見受けられます。
本来は上長が常にメンバーが立てた目標を念頭においておき、ズレてきた場合には直ぐに擦り合わせをして軌道修正してあげることが必要です。
以上、このようなポイントを吸収してもらい従業員に浸透させるまでには、まずは評価する側(上長)の意識の在り方が重要であることがご理解いただけるかと存じます。
そのため目標管理制度を導入された際には、焦ることなく地に足を付けて時間をかけて、まずは評価する側、そしてされる側に、こういったポイントを浸透させていくことに尽力していただきたいと思います。