ボトムアップ型マネジメントを実現するには?

近年のマネジメントにおいては、「従来のトップダウン型からボトムアップ型に」ということがよく言われています。

しかしながら、皆さんもご存知のようにボトムアップ型に変えることは容易いことではなく、特に中小企業においては、実践できている企業もまだまだ限られています。

ただ一方で最近、日本においてもスポーツの世界ではどんどんボトムアップ型が取り入れられるようになり、それが結果として現れる事例が次々と出てきました。

駅伝の青山学院大学や駒澤大学、高校野球の慶応高校や仙台育英高校など、いずれもトップクラスの学校は、各監督方のインタビューからも、メンバー自らが練習計画を立てて自主的に活動するなど、ボトムアップ型を取り入れた結果として実績をあげているとおっしゃっておられます。

プロスポーツの世界であれば、メンバーは一流の選手ばかりですので、自主的に考え、実行するので成果が出るという見方もありますが、アマチュアの世界でもそのような考え方が実証されつつあるというところは、ようやくボトムアップ型のマネジメント理論が日本においても証明されつつあると言っても良いでしょう。

ボトムアップ型の自由な社風として有名なのは1998年設立のGoogleですが、私は日本においても星野佳路氏の星野リゾートはそのボトムアップ型マネジメントを行っている代表的企業であるという認識です。

星野氏は1991年に家業である星野温泉旅館を引き継ぎましたが、今や65程の宿泊施設のほかスキー場などの諸施設も運営し、グループ会社11社を有する優良企業、星野リゾートグループとなっている訳ですが、星野氏監訳の「<新版>1分間エンパワーメント」(ケン・ブランチャートほか著)にありますように、社員の力をいかに引き出すかということにずっと注力してこられました。

皆さんもご存知のように、星野リゾートの各施設では、社員の皆さんの様々なアイデアが、その運営や企画に活かされています。

因みに、ここで言う「エンパワーメント」とは、エンゲージメントの考え方における活性化組織をいかに作るかという観点と共通するもので、更にマネジメントにフォーカス・強化した具体的活動を表しているものと言えるでしょう。

Googleにしても星野リゾートにしても、いずれも1990台からスタートしている訳ですが、私的には、1990年以降労働生産性が上がらず賃金も増えない日本の問題の根源のひとつは、高度成長時代のマネジメントのやり方からほとんど脱却できていないことに起因しているのはないかと考えています。

高度成長時代は需要が増える一方で供給が追い付かない状態であり、「あれしろ」「これしろ」「あれはしたか?」「これはしたか?」といったメンバー管理の仕方で、仕事は増えていきました。

要はマネージャーには、しなければいけないことは既に分かっていることであり、部下の進捗管理をすることがマネジメントでした。
いわゆるマイクロマネジメントです。

しかしながらバブル崩壊後は、需要は減る一方で企業数は増え、競争は厳しくなる状況となり、さらにグローバル化やインターネット環境の充実により、海外からの商品やサービスも増え続ける中、マネージャー自身も何をするのが正解なのかが見えなくなってきているにもかかわらず、相変わらずトップダウン型のマネジメントを続けることで、部下はなかなか成果がでないこともあり、場合によっては叱責され、失望感を持ち、やる気を失ってきたものと考えています。

つまり、リーダーが「これをやっていくことで会社もみんなも必ず成長できる」という確信を持っていない状況において、あれこれ指示を出していることで、次第に部下は上司を信頼できなくなり、結果リーダーも結果を出せないのは部下の問題として、部下に対する信頼感も失っているのではないでしょうか。

このような変化の激しい、不確実な時代であるからこそ、全メンバーの知恵と創造力を結集して、一体感を持って、事業に取り組んでいくことが必要であると考えています。

「<新版>1分間エンパワーメント~社員の力で最高のチームをつくる」には、
エンパワーメントの3つの鍵として、以下の3つが揚げられています。
第1の鍵:全員で情報を共有する。
第2の鍵:自律的な働き方を促進する。
第3の鍵:セルフマネジメント・チームを根づかせる。

このエンパワーメントの手法は、まさに社員のエンゲージメントを高めて、疲弊予備軍職場や低モチベーション職場を、活力がみなぎる活性化職場に変えるためのノウハウということで、非常に参考になります。

なお星野氏は冒頭で、エンパワーメント成功のコツは、書かれている内容を一言一句そのまま実践することが必要で、導入しやすいところだけを部分的にしか行わないのでは、成果を上げることはできない、とおっしゃっておられますので、詳しく知りたい方は書籍をご参照ください。

【参考書籍】
「<新版>1分間エンパワーメント~社員の力で最高のチームをつくる」
ケン・ブランチャート、ジョン・P・カルロス、アラン・ランドルフ著
星野佳路 監訳  ダイヤモンド社